2015年3月14日土曜日

Communication Based Medicine

 それなりに責任ある立場である現職に就いたとき、ICUをもっと良くしたいと強く思いました。それまでのICUが間違っていたわけでは決してないのですが、首をひねらざるを得ないこともあったりして。なにか自分にもできることがあればやりたいなと思ったわけです。

 さて、ICUを変えるためにはなにをすればよいでしょうか? プロトコルや決まり事を作ればよいのでしょうか? 例えば「鎮痛薬や鎮静薬はこのプロトコルでやることにしたから、みんなしっかり勉強して使ってね」と言えばそれでICUが良くなるのでしょうか? 私はそう思いません。多職種が関わる集中治療室では、ある個人(多くは医師)が主導して決まり事を作って押しつけてもうまくいかないんじゃないかと考えています。

 プロトコルなんていくらでも作ることができます。でも作るだけではやっぱり意味が無くて、現場で咀嚼され根付かないと患者さんのためにはなりません。それよりも大事なのは、患者さんのために何かができるはずだ、何かをしてあげたいという「思い」が部門全体に行きわたることなのではないでしょうか。この「思い」を抱くこと自体は当たり前のことですが、実際のところ皆が足並みをそろえて同じ「思い」で目標に向かって進んでいける集団は少ないでしょう。

 共通の「思い」を醸成するためになにができるのか。一番有効なのはコミュニケーションをとることなんだと思います。看護師さん、多科の医師、理学療法士さん、薬剤師さんなど、たくさんの人が関わるなかで「思い」を共有するには会話しかなのではないか。そんな会話の中から自然と決まりごとが生み出されるようになったとき、真にICUが変わった・良くなったと言えるのだと思っています。

 このような会話と「思い」の共有を重視した医療をCommunication Based Medicineと勝手に名付けてみました(これまでに全く使われていない言葉ではないですが)。われわれ集中治療医はCBMにおいては触媒としての役割を担う、と考えてみたりしています。

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