2015年5月15日金曜日

血糖を一定範囲に調節した時間が長いと予後が改善する

Time in blood glucose range 70-140 mg/dL > 80% is strongly associated with increased survival in non-diabetic critically ill adults
Critical Care (2015) 19:179

✔ 背景
 低血糖、高血糖、大きな血糖変動はいずれも重症患者の死亡に寄与する独立因子である。過去の研究では目標とする血糖値の範囲にコントロールできていた時間を検討していない。
✔ 方法
 2009年1月から2013年12月31日までにICU(Medical & Surgical ICU)に入室して1日以上在室した重症患者3,297名を対象として後向きに分析した。血糖値が70~140mg/dlの範囲におさまっていた時間の割合(TIR)と死亡率との関係を、糖尿病患者(DM)、非糖尿病患者(NON)でそれぞれ検討した。
✔ 結果
 NONで85,799回、DMで32,651回の血糖測定が行われ、それぞれ、75.5%と54.8%が70~140mg/dlの範囲であった(p<0.0001)。TIRの中央値はNONが80.6%、DMが55.0%であった(p<0.0001)。中央値で分けて検討(中央値より高いものはTIR Hi、中央値より低いものはTIR Lo)したところ、DMではTIR Hiの死亡率が16.09%、TIR Loの死亡率が14.44%と有意差が無かったのに対し、NONではTIR Hiの死亡率が8.47%、TIR Loの死亡率が15.71%と有意な差を認めた。NONにおける同様の有意差は、ICU在室日数や重症度で層別化しても認められた。NONにおいて検討したところ、多変量解析でTIR Hiは生存率上昇の独立した寄与因子であった。
✔ 結論
 非糖尿病患者において、血糖値を70~140mg/dlの範囲に調節した時間が長いほど生存率が改善する可能性が示された。

◎ 私見
 強化インスリン療法がよい、かどうかはこの研究からは分からない。血糖コントロールの臨床研究を行う場合は、例えば70~140mg/dlの範囲にコントロールした時間が長い群と140~180mg/dlの範囲にコントロールした時間が長い群と比較してみる、というような「コントロールできていた時間」を組み込んだ研究デザインを考えたほうがよいのかもしれません。

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