2015年5月24日日曜日

プロプラノロールは熱傷患者に有用?

Propranolol attenuates hemorrhage and accelerates wound healing in severely burned adults
Arham Ali et al.Critical Care 2015 

✔ 背景
 非選択的β遮断薬であるプロプラノロールはα受容体刺激効果への拮抗効果を遮断するため間接的に血管収縮を起こす。我々はプロプラノロールが熱傷患者の末梢血管抵抗を上昇させ、血流を減少させることを報告した。本研究では、重症熱傷患者においてプロプラノロールが創傷治癒や周術期の血行動態に影響を及ぼすかどうかを検討した。
✔ 方法
 単施設無作為化試験。69人の成人熱傷患者(%TBSA≧30%)を対象とした。プロプラノロールを投与した群(35名)と投与しなかった群(34名)を比較した。プロプラノロールは受傷48時間以内に投与開始し、心拍数が入院時から約20%減少するところを目標にして退院まで投与した。創傷治癒は手術と手術の間の期間で評価し、出血量は術中所見から推定し、手術前後のヘマトクリットで評価した。
✔ 結果
 患者背景、熱傷範囲、死亡率は両群間で差が無かった。プロプラノロール群では平均3.3mg/kg/dayのプロプラノロールを投与され、非投与群に比べて心拍数は有意に低くコントロールされた。プロプラノロール群では手術間の期間が有意に短かった(10日 vs 17日)。プロプラノロール群でより広範囲の植皮術を要したが、赤血球輸血の必要量に有意差は無かった。植皮範囲が増えると周術期のヘマトクリットがより大きく減少する傾向が観察されたが、プロプラノロール群ではその植皮範囲に対するヘマトクリット減少率が有意に小さかった。
✔ 結論
 プロプラノロールは重症熱傷患者の創傷治癒を促進し、出血量を減らす。

◎ 私見
 皮膚への血流が減ると創傷治癒にはよくない気がしてしまうが、筆者らはβ2遮断作用によるkeratinocyteやfibroblastの誘導が創傷治癒に有利に働いたのではないかと考察している。%TBSAがプロプラノロール群で有意に小さい(59% vs 49%)にもかかわらず、植皮範囲は有意に大きい(3300cm*2 vs 4500cm*2)のをどう考えたらよいのかが問題かも。短期間に広い範囲を植皮できる、と捉えて良いのかどうか。壊死範囲は広くなる(植皮を要する部位は大きくなる)が出血も少なく次の手術をすぐに計画できるということじゃないかとか考えてしまう。うーん。

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