2015年9月14日月曜日

重症急性膵炎の管理

What's new in the management of severe acute pancreatitis?
Mallédant Y, Malbrain ML, Reuter DA.
Intensive Care Med. 2015 Jun 16. PMID: 26077091


✔ 重症度評価
 Ransonクライテリアが上梓されたのは1974年で、最も新しい改訂は2012年である。新しい観点や複雑なスコアリングシステムも報告された。しかし、これらはわずかに診断力を上昇させたに過ぎなかった(AUC 0.57→0.74)。最近の知見によると、低体重/高体重、臓器不全の出現ならびに遷延、サイトカインなどのバイオマーカ測定が高リスク患者の特定に有用であるとされている。
✔ 治療
・輸液
 輸液をどのように行うべきかを示す科学的根拠や臨床的根拠に乏しいのが現状である。臨床評価やBUN、Htに基づいて早期に積極的輸液を行う考え方がある。ただし、Ht 35%を達成するような超積極的輸液(10~15ml/kg/hr)を行うと臓器不全や死亡が増えるとされている。心拍出量測定や輸液反応性を指標とした輸液が有用かもしれない。
・鎮痛
 重症膵炎による疼痛は強いため、オピオイドがよく用いられる。しかし、副作用である平滑筋攣縮作用が寛解を分かりにくくしたり、増悪したと誤解させてしまう可能性がある。最新のコクランデータベースではそのようなことは考えなくてもよいとされているが、限られた臨床研究データに基づくものであることを指摘しておく。
 硬膜外麻酔は鎮痛効果だけでなく膵臓の微小循環と組織酸素化を改善させるという意味で有用であると考える。しかし、SIRSに伴う凝固障害がその使用を妨げる可能性がある。
・栄養管理
 経腸栄養は膵液の分泌を刺激するため、膵の安静という考え方に基づき絶食管理されることが多かった。しかし、腸管安静は腸粘膜の委縮をまねき、腸内細菌叢の増加、エンドトキシンやバクテリアルトランスロケーションからSIRSを惹起する可能性がある。さらに感染性膵壊死のリスクともなり得る。腸管粘膜への好影響から、経腸栄養が膵炎を悪化させるとは言われなくなってきている。近年の研究から、早期経腸栄養は有用であると考えられるようになった。経胃投与は腹痛を増大させる可能性があるため、経十二指腸投与が好ましい。しかし、経胃単独投与でも90%の患者で目標とする栄養投与量を達成できたとも言われている。栄養剤の種類やプロバイオティクスが有用であるとの証拠は無い。
✔ 感染性膵壊死をどう管理するか
 感染性膵壊死は発症2~3週間目に40~70%の患者で生じる晩期死亡の主因である。敗血症に似た臓器不全の新規出現ないし増悪は感染性膵壊死の合併を示唆する所見であり、CTガイド下穿刺を考慮すべきである。グラム染色施行後に抗菌薬を投与する。手術よりも姑息的な管理が好まれる。穿刺吸引から小開腹による低侵襲壊死組織切除にステップアップするアプローチで合併症や死亡が減ったと報告されている。
✔ 胆汁性膵炎の管理をどうするか
 胆石は重症膵炎の最も大きな発症原因である。腹部エコーの感度は低いため、繰り返し検査する必要がある。胆管結石については超音波内視鏡が感度・特異度共に優れている。コクランレビューによると、明らかな胆道閉塞が無ければERCPに有用性は無いとのことである。一方、胆管炎や胆道閉塞がある場合は24時間以内の緊急ERCPが推奨される。
✔ 腹部コンパートメント症候群
 腹腔内圧上昇(IAH)と腹部コンパートメント症候群(ACS)はそれぞれ50~75%、10~25%に認められる合併症である。炎症と輸液によって生じると考えられている。腹腔内圧上昇により横隔膜が挙上し、圧迫性無気肺と高炭酸ガス血症を生じる。これに胸水が合併し、低酸素をきたす。
 内科的治療が無効であった場合は救命のために減圧のための開腹を考えるべきである。より低侵襲の方法として、皮下で筋膜切開するSLAFという方法がある。
重症急性膵炎の管理(文献より引用)
◎ 私見
 急性膵炎の管理は分からないことが多い、ということ。だからこそ治療の方針決定のために皆で話し合う文化があるといいと思う。同じ科なのに人が違うと治療方針が違ったりするし・・・

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