2015年10月18日日曜日

死腔換気率とARDSの予後

The association between physiologic dead-space fraction and mortality in subjects with ARDSenrolled in a prospective multi-center clinical trial.
Kallet RH, Zhuo H, Liu KD, Calfee CS, Matthay MA; National Heart Lung and Blood Institute ARDSNetwork Investigators.
Respir Care. 2014 Nov;59(11):1611-8. PMID: 24381187


✔ 背景
 生理学的死腔率(一回換気量に占める死腔の比 VD/VT)はガス交換に寄与しない換気量を示す。ARDSでは線維化の進んだ晩期に死腔率が上昇すると考えられてきたが、発症24時間以内に上昇することが分かってきた。ARDSにおいて死亡に寄与する因子であるかどうかを検討した。
✔ 方法
 前向き多施設観察研究。126名のALIならびにARDS(ACCPのクライテリア)患者が対象となったアルブテロールの効果を比較検討したRCTのサブスタディ。NICOモニタを使用。死腔率と各種パラメータは研究参加から4時間以内と1日目、2日目に測定した。生存群と死亡群で比較した。
 VD/VT=(PaCO2 - PETCO2)/PaCO2
✔ 結果
 ベースラインを比較してみると死亡群では死腔率が高い傾向があった(0.62 vs 0.56 P=0.08)。1日目、2日目では死亡群で死腔率が有意に高かった。同様に、1日目と2日目において、いくつかの因子を調整してみても死腔率は死亡の独立した予測因子であった。
✔ 結論
 ARDS早期の死腔率上昇(≧0.60)は死亡率が高いことが示唆される。ARDSを対象とした臨床研究において死亡率の高い群を検出するために死腔率は有用である。

◎ 私見
 ひとくちにARDSと言ってもその病態が一様ではないことは周知の通り。死腔率を用いて重症度で層別化してはどうかというアイデア。最近換気の評価に注目しているので読んでみた。問題は呼気炭酸ガス分圧の測定が信用に足るかどうかというところか。
 ところで、当科で研修中の先生方に伝えたいのは、この「一様ではない」というところ。すべての疾患や病態に通じるところだと思う。画一的な治療をするのではなく、いろいろと心を砕いて欲しい。高カリウム血症の治療は、どんな患者さんに対しても「それ」でいいの?

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