2015年11月26日木曜日

敗血症の微小循環障害にNOは無効

Randomized controlled trial of inhaled nitric oxide for the treatment of microcirculatory dysfunction in patients with sepsis*.
Trzeciak S, Glaspey LJ, Dellinger RP, Durflinger P, Anderson K, Dezfulian C, Roberts BW, Chansky ME, Parrillo JE, Hollenberg SM.
Crit Care Med. 2014 Dec;42(12):2482-92. PMID: 25080051


✔ 背景
 敗血症ガイドラインでは血行動態管理の適正化が述べられているが、敗血症に伴う微小循環障害については言及されていない。NOは敗血症などで産生が増加しており、低血圧の原因となる。一方で微小血管の開通性を維持するための生理的反応とも考えられる。血行動態適正化の後にNOを吸入させることで微小循環が改善し、乳酸値や臓器不全が改善するかどうかを検討した。
✔ 方法
 単施設無作為化比較試験。輸液負荷にもかかわらず収縮期血圧90mmHg未満もしくは乳酸値≧4mmol/Lの成人重症敗血症患者を対象とした。血行動態が安定した後に、40ppmのNOもしくはSham NOを6時間吸入させた。特別な機材を用い、調査者やスタッフに対して盲検化した。Sidestream darkfield videomicroscopyを用い、舌下部微小循環を吸入直前と吸入終了2時間後に解析した。プライマリアウトカムは微小循環指数の変化、セカンダリアウトカムは乳酸クリアランス、SOFAスコアの推移とした。
✔ 結果
 50例の患者が対象となった。56%で血管作動薬を要し、30%の患者が死亡した。NOは血中硝酸値を上昇させたが、微小循環指数、乳酸クリアランス、SOFAスコアを改善しなかった。なお、血行動態の悪化はNO群で19%、Sham群で13%であった。
✔ 結論
 NO吸入は微小循環障害を改善しないのみならず、乳酸クリアランスや臓器不全を改善しない。

◎ 私見
 微小循環を改善させるためのNOは無効。血行動態が安定した後に微小循環を改善しようと思うようなシチュエーションが果たして敗血症全例に生じるかどうか、ちょっと考えてみるとそうでもない気がする。敗血症性ショックの中でも四肢冷感が強い例とかScvO2が高い例だとかに限ってはこういう血管拡張薬が有用かもしれないとは思うが。重症度や病態による層別化が必要なのではないだろうか。

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