2015年11月16日月曜日

PEEPが脳灌流に与える影響

Effects of positive end-expiratory pressure on brain tissue oxygen pressure of severe traumatic brain injury patients with acute respiratory distress syndrome: A pilot study.
Nemer SN, Caldeira JB, Santos RG, Guimarães BL, Garcia JM, Prado D, Silva RT, Azeredo LM, Faria ER, Souza PC.
J Crit Care. 2015 Jul 26. PMID: 26307004


✔ 背景
 PEEPを高く設定したことで頭部外傷患者の脳組織酸素化が悪化するかどうかは分かっていない。本研究ではPEEPが酸素飽和度、頭蓋内圧、脳灌流圧に与える影響について調査した。
✔ 方法
 20人のARDSを併発している頭部外傷患者を対象とした。全例脳室にカテーテルを留置して頭蓋内圧を測定した。頭蓋内圧はCamino MPM-1、脳組織酸素分圧はLicoxを用いて測定した。
 PEEPを5、10、15と漸増しながら20分ずつ適用し、それぞれにおいて脳組織酸素分圧、酸素飽和度、頭蓋内圧、脳灌流圧を記録した。なお、肺胞虚脱を避けるため、PEEPは漸増する方法を採用している。
 研究期間中、患者はRASS -5と深く鎮静し、必要であれば筋弛緩薬を使用した。全例30度に上体を挙上し、FIO2はSpO2≧96%となるように調整した。換気はVolume controlled ventilationとし、理想体重当たり6~7mlとなるように換気量を設定した。呼吸数は15~25回/分とし、動脈血炭酸ガス分圧が35~40mmHgとなるように調整した。平均血圧が低下したらNoradrenalineを持続静注して80mmHg以上となるようにした。頭蓋内圧20mmHg以上、脳灌流圧60mmHg未満、脳酸素分圧15mmHg未満となった場合は研究を中止した。
✔ 結果
 脳組織酸素分圧と酸素飽和度はPEEPを上昇させることで有意に増加した。一方、頭蓋内圧と脳灌流圧はPEEPによって変化しなかった。
✔ 結論
 PEEPを上昇させることで脳組織酸素分圧と酸素飽和度を上昇させることができた。PEEPは重症頭部外傷患者でも安全に使用できる。
脳組織酸素分圧とPEEP(文献より引用)
◎ 私見
 胸腔内圧が上がり過ぎると静脈圧が上昇して脳灌流が悪くなるのではないかと言われていたが、そうでもないらしい。そもそも呼吸が悪くなっている場合は灌流うんぬん以前に酸素化をよくするための介入が優先されるべきということだろう。

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