2016年1月12日火曜日

無作為化試験に参加しなかった患者の予後

Characteristics and Outcomes of Eligible Nonenrolled Patients in a Mechanical Ventilation Trial of Acute Respiratory Distress Syndrome.
Arabi YM, Cook DJ, Zhou Q, Smith O, Hand L, Turgeon AF, Matte A, Mehta S, Graham R, Brierley K, Adhikari NK, Meade MO, Ferguson ND; Canadian Critical Care Trials Group.
Am J Respir Crit Care Med. 2015 Dec 1;192(11):1306-13. PMID: 26192398


✔ 背景
 無作為化試験の候補者は様々な理由で試験に参加しないことがある。このような研究不参加は臨床研究の一般化を妨げ、研究期間を延長させる可能性がある。そこで、候補者となりながらも研究に不参加となった患者(Eligible nonenrolled; ENE)の特徴を調査した。
✔ 方法
 ARDSに対するHFOと通常換気(Conventional ventilation; CV)の比較を行った多施設無作為化試験であるOSCILLATE試験のデータを用いた二次解析。適合患者(Screened)のうち除外基準に相当しないものが候補者(Eligible)となり主治医と患者(ないしその代諾者)の同意を得て研究に参加することとなる。このなかで候補者となりながらも同意を得られずに研究不参加となった患者をENEとして抽出した。ENEのうちHFOを使用したものをENE-HFO、使用しなかった者をENE-CVとした。
✔ 結果
 548人が研究に参加した一方で546人がENEとなっていた。ENEの最多の理由は代諾者の同意を得られなかった(42%)ということであり、以下、主治医の拒否(24%)、無作為化が可能な期間を過ぎた(15%)、既にHFOを使用していた(14%)であった。研究に参加した患者に比べ、ENE-HFO群は若く、肺傷害の程度が強かった。また、ENE-CV群は重症度が低かった。ENEは死亡率増加の独立した危険因子(1.39)であった。
✔ 結論
 ENEは半数の候補者で起きていた。研究に参加することで人工呼吸管理患者の予後が改善することがわかった。研究におけるENE患者の管理については再考の余地がある。
ENEは死亡の危険因子(文献より引用)
◎ 私見
 まず、研究参加者とENE群の重症度の違いについて。HFOの有用性を評価するための試験なので、HFOを使用していても重症すぎる患者(HFO群に組み込まれてもすぐに死亡する可能性が高い)やHFOに割りつけられたときに必要となる深い鎮静がかえって問題になりそうな軽症の患者(HFO群に組み込まれて深鎮静すると予後が悪化する可能性が高い)は主治医が断ったのでは?などと考察されていた。主治医の意向は大きく影響するのは当然だろうし、まあそうなんだろうなと思う。
 驚きなのは、ENEの通常呼吸管理群(ENE-CV)の予後が研究に参加していた通常呼吸管理群(つまり対照群)より悪いということ。臨床研究プロトコルに従って「徹底的に」低一回換気量+高PEEPを維持することが有用だったのではないかという考察。
 さて。ICUの名前たるIntensity(強度)がどれくらい発揮できているのか。普通の事をしっかり、徹底的に行えているのだろうか。もういちど考え直す時期がきている気がする。派手な手技や新しいモニターやマーカーに気をとられるのではなく。

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