2016年2月2日火曜日

Arterial loadを理解する

Understanding arterial load.
Monge García MI, Saludes Orduña P, Cecconi M.
Intensive Care Med. 2016 Jan 22. PMID: 26801663


✔ はじめに
 心臓と動脈系は解剖学的にも機能的にもつながっているが、しばしば別々の器官であるかのうように扱われる。動脈系は単なる血液の導管ではなく心拍出を修飾し、拍動性の血流を定常流に変換し、拡張期に血圧を維持するといった機能を持つ。したがって、心血管系をつぶさに説明しようとするなら心機能だけでなく動脈系がどのように相互作用しているかを考えなくてはならない。

✔ Arterial loadは後負荷の指標である
 心臓が動脈系とどのように相互作用するかを知るためには心臓が血液駆出の際にうち勝たなくてはならない外的抵抗であるArterial load(AL)を知らなくてはならない。ALは動脈系のある特定の性質をあらわすものではない。血液が心臓から駆出されて体血管や肺血管に流入する際に生じる抵抗すべてを合わせた概念である。それゆえ、ALは正味の心後負荷と言える。
 心不全や肺高血圧/体高血圧はALのミスマッチの結果である。非侵襲的陽圧換気や血管拡張薬はALを減らすことによって治療効果を示す。

✔ Arterial loadは動脈圧の決定因子である
 血圧は血流とALの相互作用によって生じる。ALは心拍出を修飾して一定の組織灌流圧を生み出す。したがって、輸液負荷試験において血流の指標として血圧を用いる際には注意が必要である。輸液が血圧に与える影響はALが最終的に影響すると考えられるからである。

✔ Arterial loadの指標
 体血管抵抗(SVR)が従来より用いられてきたが、動脈系すべての抵抗の総和であると考えるのは誤りである。SVRは定常流に対する抵抗であり、拍動性の血流に対する抵抗を意味しないからである。また、SVRの分布は血管系の中で一定ではないし、CVPを下流の圧とみなして計算することにも問題がある。
 拍動性の圧と血流に対する抵抗を評価する際のゴールドスタンダードはArterial impedance(Zin)を測定することである。SVRとは異なりZinは複雑な拍動圧と拍動流の関係を説明し、動脈系の機械的特性や動脈反射波の影響を統合できる。残念ながらZinを臨床において計測することは困難であるため、例えば3-element Windkessel modelなどで単純化して代替するしかない。

✔ Effective arterial elastanceはArterial loadの指標である
 ALの全ての要素を一つの指標に統合することができ、これをEffective arterial elastanace(Ea)という。Eaは容量の変化に対する圧の変化を表している。Eaは動脈の固さを表す指標というだけではなく、ALの基本的な特性を含有する概念である。
 Eaは心室収縮末期圧と一回拍出量との関係で計算できる。心室収縮末期圧は収縮期血圧の90%を用いることで代替できる。一回拍出量は近年のモニタで計測することができる。Eaはベッドサイドで簡単に計算できる。Zinを評価する際のEaの信頼性は十分にあることがわかっている。

✔ Arterial loadの機能低評価:dynamic arterial elastance
 脈圧変動と一回拍出量変動の比であるDynamic arterial elastance (Eadyn)はALの機能的側面を表している。Eadynは呼吸性変動における血圧と一回拍出量の関係を示している事から、輸液負荷に対する反応性を予測する際に有用かもしれない。
心拍出・動脈圧とArterial load(文献より引用)
◎ 私見
 Arterial loadに関するMini review。Ventriculo-arterial couplingについての再考。流行りのモニタでSVRで計算する時、CVPを計算式に入れている事に不安を感じていたので読んでみた。実効動脈エラスタンス(Ea)は心拍出量とSVRとの関係を説明する指標であり、心室収縮末期圧を一回拍出量で割ることで求められる(単位:mmHg/ml)。これを後負荷の指標にした循環管理が有効かどうか、検証してみてもよいかも。

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