2016年3月14日月曜日

肺エコーで腹臥位換気の効果を予測できるか?

Can lung ultrasonography predict prone positioning response in acute respiratory distress syndrome patients?
Prat G, Guinard S, Bizien N, Nowak E, Tonnelier JM, Alavi Z, Renault A, Boles JM, L'Her E.
J Crit Care. 2016 Apr;32:36-41. PMID: 26806842


✔ 背景
 腹臥位換気は重症ARDSにおける補助療法の一つである。酸素化の改善が期待できるが、様々な合併症の危険性もある。ARDS患者の70~80%は腹臥位によって酸素化が改善するといわれるが、酸素化が改善するかどうかを予測する方法は確立していない。非侵襲的に行える肺エコーで腹臥位換気の効果を予測できるかどうかを検討した。
✔ 方法
 19人のARDS患者を対象とした。診断基準はベルリン定義、全例肺保護換気を行った。腹臥位は少なくとも12時間行った。肺エコーや酸素化の指標の評価はH0(腹臥位直前)、H2(腹臥位2時間後)、H12(仰臥位に戻す直前)、H14(仰臥位復位2時間後)に行った。
 肺エコーは5~8MHzカーブアレイプローブ、肥満患者や画像が不鮮明な場合は1~5MHzセクタアレイプローブを用いた。それぞれの患者について12か所の部位を調査し、後ろ向きに検討した。肺の換気状況は4段階に分類した。N(スライディングサインあり、時にAライン、Bラインはあっても1~2本)、B1(3本以上のBライン)、B2(多発するBライン、癒合するBライン)、C(Tissue like sign)。B1、B2、Cは換気不良の徴候であるとみなした。注意すべきは、Nは正常を意味するのではなく、換気があることを意味するのであって、例えば過膨張を識別できないことである。H2またはH12の時点でP/Fが20以上増加したとき、腹臥位によって酸素化が改善した(H2早期改善群、H12後期改善群)と判断した。
肺エコーによる分類(文献より引用)
✔ 結果
 対象患者の大部分が肺病変に起因するARDSであった。早期改善は63%、後期改善は68%に認められた。前胸部の肺エコーが正常パターンであった場合、腹臥位による酸素化の早期改善を特異度100%、陽性的中率100%で予測できたが、感度は58%、陰性的中率は58%にとどまった。同様の傾向が後期改善群でも認められた。
✔ 結論
 肺エコーで前胸部の換気が良好であれば腹臥位によって酸素化が改善する。

◎ 私見
 肺エコーを治療効果の予測に使えないかと考えていたら、同じようなことがすでに研究されていた。パイロット研究で対象が19人とかなり小規模なものだが、特異度100%で酸素化の改善を予測できるというのは魅力的。
 そういえば。10年ほど前、上司に「お前が考えつくような研究のネタは、他の人がすでに思いついて研究されている」といわれたのを思い出してしまいました。まあ、そうなんだろうけど、指導医としてそんな言い方はないよな、と反面教師にすることを誓ったのでした。

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