2016年4月18日月曜日

イオン化カルシウム②



Ionized Calcium in the ICU: Should It Be Measured and Corrected?
Aberegg SK.
Chest. 2016 Mar;149(3):846-55. PMID: 26836894

イオン化カルシウムに関するReview。

✔ 現状
 イオン化カルシウムの正常範囲は施設や研究によってばらばらであり、異常値をどのように定義するかもばらばらである。このような状況では約50%で一度は異常値を呈するといわれるICU患者のカルシウム異常の疫学を知ることはできない。
 多くの施設で積極的にカルシウムは測定され、低カルシウム血症は補正されている。この”ホメオスタシス維持”のアプローチは原因を特定して治療するというより値を正常範囲にすることを主目的としていることがいくつかの研究から読み取れる。さらに、ICUにおけるカルシウム投与は値を正常範囲にすることだけが目的であり症状を改善させることを目的としていないという問題も指摘できる。
 このような状況では重症患者においてカルシウムをルーチンに計測して補正することを正当化することはできない。Cochrane ReviewによるとICUにおけるカルシウム投与の死亡率・臓器不全・在室日数・コスト・合併症をアウトカムとした比較試験をひとつも見出すことができなかった。以下の章では、どのようなデータに基づいて現在のような臨床が行われるようになってきたのかをみていく。

✔ 観察研究
 1980年代初頭より、重症患者では低カルシウム血症を呈するような疾患、例えば副甲状腺機能低下症やビタミンD欠損症が極めてまれであるにもかかわらず、イオン化カルシウム濃度が低いことが報告されるようになっている。さらに、低カルシウム血症が死亡の危険因子であることも報告されている。一方で、APACHEⅡスコアに代表されるような重症度とも強く挿管することが知られており、多変量解析を用いると死亡予測に対するカルシウムの有意性は消失することも報告されている。通常、1週間で正常になるが、死亡群は生存群ほど早く正常にならないというカルシウム濃度の変化に関する研究もみられる。
 低カルシウム血症に対するカルシウム投与については4つの観察研究がある。頻回に検査され、約50%で低カルシウム血症が見つかり、大量のカルシウム製剤が消費されている。興味深いのは、カルシウムを投与してもイオン化カルシウム濃度はわずかにしか改善しないということである。標準検査項目からイオン化カルシウムを除くことで(つまりルーチンにしないことで)イオン化カルシウム検査数が75%減少し、カルシウム投与量も減少したという報告もある。これによって死亡や心停止が増えた証拠はなく、痙攣はむしろ減ったとしている。これらの研究からは、イオン化カルシウムを測定してカルシウムを投与しても、そもそも値をほとんど改善させることができず、アウトカムも変えないということが言えそうである。

◎ 私見
 カルシウムの投与に関しては質の高い研究はなく、観察研究でも特別有用とは言えないということであった。カルシウムは昇圧剤であるとイメージして使用しているが、これにも意味はないのだろうか。低カルシウム血症の程度の問題もあるし、もうすこし研究がされてもいい分野なのではないかという気がする。

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