2016年4月8日金曜日

心停止に対する抗不整脈の効果

Amiodarone, Lidocaine, or Placebo in Out-of-Hospital Cardiac Arrest
Peter J. Kudenchuk, M.D., et al  Resuscitation Outcomes Consortium Investigators*
April 4, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1514204


✔ 背景
 院外心停止における除細動に反応しない心室細動ならびに心室頻拍に対し、抗不整脈がよく用いられるが、生存率を改善させるかどうかまではわかっていない。
✔ 方法
 北米で行われた前向き無作為化試験。心室細動もしくは無脈性心室頻拍で少なくとも1回の除細動に反応せず、静脈ラインが確保されている成人を対象としてアミオダロン、リドカイン、プラセボ(生理食塩水)を無作為に投与した。プライマリアウトカムは生存退院率とした。セカンダリアウトカムは退院時の神経学的予後とした。
✔ 結果
 Per-protocol analysisで解析した。3026例がアミオダロン(974)、リドカイン(993)、プラセボ(1059)に無作為に振り分けられた。それぞれ、24.4%、23.7%、21.0%が生存退院した。アミオダロン vs プラセボの生存率の差は3.2%(-0.4~7.0、p=0.08)、アミオダロン vs リドカインは0.7%(-3.2~4.7、p=0.70)であった。退院時の神経学的予後は三群間で差がなかった。心停止の目撃がある場合とない場合とでは治療の効果に差があった。プラセボではなく薬剤が投与された場合、目撃のある心停止では有意に生存退院率が高くなったが、目撃がない心停止の場合では有効ではなかった。アミオダロンを投与された群では蘇生後に一時ペーシングを要する患者が多かった。
✔ 結論
 除細動抵抗性の初期波形が心室細動ないし心室頻拍の院外心停止において、アミオダロンもリドカインも生存退院率や神経学的予後を改善しなかった。

◎ 私見
 心停止における抗不整脈薬の有用性に関する研究。ITT解析ではないとか、目撃のあるなしが均一ではないとか問題はあるものの、かなりインパクトのある結果ではある。目撃のある=心肺停止からの時間が短く、かつ除細動抵抗性があるものに関しては抗不整脈が良い可能性は残されている。心室細動発生からの時間が短いほど除細動成功率は高まるはずなのに除細動に抵抗するような、いわゆるElectrical stormでは抗不整脈が有用ということなのかもしれない。逆に、心停止発症からの時間が比較的長い場合、不整脈を止める・止めないということよりもCPRの質であったり、もともとの病態などが大きく影響してくるということだろう。しかし、この領域でRCTができるなんて、驚きである。

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