2016年5月21日土曜日

腎代替療法を開始するタイミング(AKIKI study)

Initiation strategies for renal-replacement therapy in the intensive care unit
Stephane G, Daved H, Frederique S et al
N Engl J Med. 2016

✔ 背景
 生命に直接危険を及ぼさない程度の急性腎傷害に対して、腎代替療法どの時期に始めればよいのかはまだ分かっていない。
✔ 方法
 多施設無作為化試験。人工呼吸管理ないしカテコラミン投与をうけており、かつ生命に直接危険を及ぼすような合併症をきたしていないKDIGO分類でStage 3の急性腎傷害患者を対象とした。早期群は無作為化直後に腎代替療法を導入した。晩期群は、高カリウム血症(>6mEq/L)、代謝性アシドーシス(pH<7.15)、肺水腫、BUN>112、72時間以上の乏尿のうち少なくともどれか一つを認めるまで腎代替療法導入を見送った。両群とも、自尿が500ml/dayを超えたときに腎代替療法中止を考慮し、利尿剤を使用せずに1000ml/dayもしくは利尿剤を使用せずに2000ml/dayを超えたときは中止を強く推奨した。プライマリアウトカムは60日生存率とした。
✔ 結果
 620人が無作為化された。Kaplan-Meier曲線の分析からは両群間で60日生存率に有意な差はみられなかった。(早期群311例中150例が死亡、晩期群308例中153例が死亡)。晩期群のうち151例は腎代替療法を要さなかった。血流感染の率は早期群で有意に高かった(10% vs 5%, P=0.03)。利尿、腎機能の改善は晩期群でより早く認められた。
✔ 結論
 腎代替療法開始のタイミングでは生存率に影響しなかった。晩期に開始する戦略をとればかなりの割合の患者で腎代替療法を避けることができる。

◎ 私見
 腎代替療法をどのタイミングで始めるかに関して調べた研究。カンファレンスでもよく議論になるところなので結果が出るのが楽しみだった。これまでは「高カリウム血症などの適応が生じたら」腎代替療法を導入するという戦略を用いてきたので、これは本研究の晩期群の戦略とほぼ同じ。ということで、少なくとも自分の診療方針に変更を加える必要はなさそう。

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