2016年7月14日木曜日

ケタミンによる鎮痛鎮静③

Ketamine for Analgosedation in the Intensive Care Unit: A Systematic Review.
Patanwala AE, Martin JR, Erstad BL.
J Intensive Care Med. 2015 Dec 8. PMID: 26647407

✔ ICUにおけるケタミン(臨床研究)
 ICUにおいてケタミンを少なくとも24時間連続投与して従来の薬剤の効果と比較した臨床研究は六つある。Guillouらのモルヒネ投与量減少効果を報告した93例を対象とした研究を除くと、各々の研究は30例を超えることのない小規模な研究ではあるが、消化管機能や脳血管系、心臓血管系への影響を調査している。サンプルサイズが小さいという問題はあるが、これらの研究によると、重症頭部外傷に対して脳血管系には有意な副作用はなく、高用量投与においてわずかに(1~2㎜Hg)頭蓋内圧を上げるが同時に脳灌流圧も高くなっていた。全身の血行動態に対しては一部の患者では有用(低血圧に対する血管作動薬の投与量を減らせた)であるが、ケタミンの用量や心血管系疾患の既往によっては有害(心不全や心筋虚血を悪化させる)であった。他の非無作為化試験の結果もこれらの研究の結果とほぼ同様であった。

✔ ケタミンによる鎮痛鎮静の実際
 ケタミン使用の実際を示す(表)。これは重篤な疼痛を訴える患者に対して第一選択と考えられる従来の鎮痛薬(NSAIDSやオピオイド)をしっかりと使用したことを前提として設定されている投与計画である。従来の方法に対して反応が悪い場合にケタミンの使用を考えるが、反応が悪いということを明確に定義するものはない。おおむね最大投与量を使用しても疼痛があったり副作用が問題となる場合にケタミンの併用を考える。
 過去の研究に示された投与計画は様々であるが、古い時代の研究は人工呼吸管理開始とともに中断することなく麻酔状態を達成するために鎮静薬が投与されていたことを考慮しなくてはならない。ここに記載してあるのはかなり姑息的な投与量としてあり、精神症状のような副作用でせん妄や他の中枢神経症状との鑑別に難渋しないようにすることを目標としている。ケタミンを長期間投与すると薬剤が蓄積し、回復に時間がかかる。そこで、ケタミンを持続投与する場合は毎日中断してSATすることを推奨する。他の方法としては1-time 4-hour法というものがあり、これは様々な癌性疼痛/非癌性疼痛に対して数日にわたる痛みを減らすために用いられる方法である。急激な疼痛に対してはボーラス投与が必要であり、0.2~0.5㎎/kgという投与量を推奨している。しかし、高用量では健常人でも意識消失する可能性があるため、下限の0.2㎎/kgから始めるほうが良い。処置時の鎮静のように意識消失が必要である場合は1㎎/kgくらいの高用量が必要である。用量調節を柔軟に行うため、他の薬剤との混注は推奨しない。


ケタミン投与法(文献より引用)
◎ 私見
 0.06mg/kg/hrで開始して最大1.2㎎/kg/hrまで増量可能。体重50㎏の人なら1時間あたり3㎎で開始して最大60㎎。熱傷患者とか若い多発外傷患者とか良いのかなと思ってはいるがこういった患者さんは痛みのためにDaily interuptionもしづらいし、長期投与にもなりがちだから悩ましいところ。

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