2020年2月1日土曜日

PEEPの決め方

Rezoagli E, Bellani G.
Crit Care. 2019 Dec 16;23(1):412. PMID:31842915

ARDSでは虚脱する肺領域が存在するため、PEEPを付与することで呼気終末肺容量End-expiratory lung volume(EELV)が大きくなり、呼吸器系コンプライアンス(Crs)が改善し、換気駆動圧(DP)が減少する。現在のガイドラインでは中等度~重度ARDSにおいては高めのPEEPが推奨されているが、絶対値が示されているわけではないが、ここではDPと酸素化を指標にして血行動態が許す限りPEEPを高くするアプローチをとる方法を紹介する。

① 換気駆動圧DP
PEEPを高くするにつれてCrsは改善するが、過膨張が生じると逆に悪化するであろうことを利用する。換気量を一定にした状態でPEEPを増やし、DPが減少するのであればリクルートメントが生じていると判断する。この方法がうまくいくかどうかを判断する目的で軽度のリクルートメント手技(Diagnostic RM)を行うこともある(40cmH2O×20秒など)。PEEPを増やしてCrsが減少する(DPが増加する)ようであれば過膨張が生じていると判断し、PEEPもしくは一回換気量を減じる。
② 酸素化
P/Fは肺がリクルートされたかどうかの指標にはなり得ないが、PEEPによって酸素化が改善した症例の予後が良いとの報告もあるため酸素化はモニタする。PEEPによって酸素化が改善しなかった場合は吸入酸素濃度を増やす。PEEPを増やしたことによってPaCO2が増大する場合は過膨張が示唆される危険なサインである。

Electrical impedance tomography(EIT)が使用できる場合は、以下のようにPEEPを設定する。まずDiagnostic RMを行いリクルートメントが有効かどうかを判定する。次いでPEEPを2cmH2Oずつ増やしながらEELVが安定するレベルをEITで検索する。食道内圧を用いて調整をすることもある

RM+高いPEEPが死亡率を増やすという報告もある(ART trial)。しかしこの研究はPEEPを増やしたことがDPを減らしたかどうかを検討していない、循環不全をきたすほどのRM、ベストPEEPに2cmH2O上乗せしたことが局所的に過膨張を引き起こした可能性などの問題があるため自分たちの方法とは異なる。


◎私見
もちろんこれは個人の(この施設の)やり方に過ぎないのですべての症例に推奨すべきものではないが、PEEPなんてとりあえず上げときゃいいんでしょみたいなやり方に比べればはるかにまし。
なかなかうまく言えないが、強固なエビデンスがない=どうでもよいということではないことを研修医の先生たちのはしっかりと理解してもらいたい。そんなの当たり前だと思うかもしれないが、実際は”どうでもよい”やり方で患者さんを治療している人が多い気がしている。




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