2015年2月9日月曜日

クロール負荷は合併症を増やす

Meta-analysis of high- versus low-chloride content in perioperative and critical care fluid resuscitation.
Krajewski ML, Raghunathan K, Paluszkiewicz SM, Schermer CR, Shaw AD.
Br J Surg. 2015 Jan;102(1):24-36. PMID: 25357011


✔ 目的
 高クロール血症は腎灌流量を減らし、免疫機能を低下させ、死亡率上昇と関係している事が示唆されている。これまで晶質液のクロール含有量に着目したメタアナリシスはない。周術期ならびに集中治療におけるクロール負荷量と患者予後の関係を明らかにする。
✔ 方法
 急性疾患や周術期の患者を対象とし、高クロール(111~154 mmol/L)輸液と低クロール(111 mmol/L以下)輸液の効果を比較している無作為化比較試験、症例対照研究、観察研究をすべて含めて検討した。エンドポイントとして、死亡率、腎機能、血清クロール値、高クロール性代謝性アシドーシス、輸血量、人工呼吸管理期間、ICU在室日数、在院日数を検討した。
✔ 結果
 6523人の患者を含む21の研究が見つかった。高クロール輸液は死亡率には影響しなかったが、腎機能悪化(RR 1.64)、高クロール性代謝性アシドーシス発生(RR 2.87)、高クロール血症(MD 3.70 mmol/L)、輸血増加(SMD 0.35)、人工呼吸管理期間延長(SMD 0.15)に関係していた。
✔ 結論
 高クロール輸液は関連は弱いが有意に予後悪化と関係していた。しかし、死亡率を増加させなかった。

結果の要約(文献より引用)
◎ 私見
 この論文の高クロール輸液に該当するのは基本的には生理食塩水のみ(該当した21研究のほとんどが生理食塩水と他の細胞外液との比較)。実際問題としてあまり生理食塩水を使用しないので実感がわきづらいが、全く使わないわけでもないので読んでみた。もともと低ナトリウム・低クロールであったらどうなのかとか、総投与量によって違いがあるのかとか、腎機能障害の既往がある場合はどうなのかとか気になることはある。
 あとは序文に書いてある通り、”蘇生輸液について晶質液と膠質液の比較が盛んに行われてきたが、晶質液としてクロールを多く含む生理食塩水が使われている”場合は結果の解釈に注意が必要、ということか。



0 件のコメント:

コメントを投稿