2015年7月3日金曜日

熱傷に酢酸リンゲルを用いた輸液蘇生は有用かもしれない

Safety of resuscitation with Ringer's acetate solution in severe burn (VolTRAB)--an observational trial.
Gille J, Klezcewski B, Malcharek M, Raff T, Mogk M, Sablotzki A, Taha H.
Burns. 2014 Aug;40(5):871-80. PMID: 24342121


✔ 背景
 重症熱傷の蘇生には様々な輸液製剤が用いられているが、輸液製剤が大量に用いられて蓄積することによる予後への影響については研究がほとんどされていない。ショックの蘇生で大量に使用することで臨床的な違いが生まれるかもしれない。
 乳酸リンゲル液(LR)は肝代謝を要する、好気的代謝需要を増す、反跳性アルカローシス、好中球活性化(d-Lactateによるフリーラジカル放出)、アポトーシス誘導(d-Lactateによる)を起こす可能性があり、また、乳酸値を蘇生の指標として使用できなくなる可能性がある。
✔ 方法
 Before-After study。TBSA 20~70%の重症熱傷患者に40例続けて酢酸リンゲル液(AR)を使用した輸液蘇生を行い、LRを使用した40例と比較した。アウトカムとしてSOFAスコア、28日死亡率、60日死亡率、電解質の推移、腎機能、感染症発症率、累積輸液量、人工呼吸管理期間を設定した。
✔ 結果
 両群間の年齢、TBSA、ABSIに差はなかった。入院3日目から6日目までのSOFAスコアはAR群で有意に低く推移した。心血管系のスコアが低いことが要因であった。28日目までの累積輸液量に差はなかったが、AR群では膠質液と輸血の量が少ない傾向があった。AR群は血小板数が高く推移した。LR群では3日目までの乳酸値が高く経過した。28日目、60日目の死亡率に有意な差はなかった。
✔ 結論
 酢酸リンゲルは重症熱傷患者の輸液製剤として適切である。乳酸リンゲル液に比べて有用である可能性がある。
SOFAスコアの推移(文献より引用)
二次アウトカムの結果(文献より引用)
◎ 私見
 大量に輸液するので輸液製剤間の違いが顕在化するかもしれないという考え方が面白かった。6年間にわたるBefore-After研究なので結果の解釈には注意を要するが、可能性のある選択肢として頭に入れておこうと思う。

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