2016年1月17日日曜日

遷延性AKIに対するアプローチ(DAMAGE)

Persistent Acute Kidney Injury.
Kellum JA.
Crit Care Med. 2015 Aug;43(8):1785-6. PMID: 26181122


CCMに掲載されたEditorial

✔ 急性腎傷害(AKI)の臨床研究で難しいのは、そもそもAKIが意味する腎機能障害が多様な臨床状況を反映しているという点にある。生理的反応としての腎機能低下(尿量低下)なのか病的腎機能低下なのかを区別するのは難しい。さらに重要なことは、生理的反応であったとしても良性の経過をたどるとは限らない点である。ちょうど、心機能に問題が無くてもPEAになり得て、しかもこれは心停止であるという点で予後不良であることに似ている。
 AKIの診断基準・分類基準が標準化されてバイオマーカについても検討されたが、いずれも病的腎機能と生理的反応とを明確に区別できない。
 伝統的には腎前性・腎性・腎後性という解剖学的なアプローチが鑑別診断に用いられてきたが、状態を正確に反映しているかというとそうではない。例えば、腎前性は循環血液量減少を意味するが腹腔内圧上昇による灌流圧低下でも同様の病態となる。また、腎性も糸球体腎炎を意味するかもしれないし尿細管壊死を意味しているのかもしれない。また、腎前性に対して輸液をするのか除水(右室不全に対して)をするのかが分からないというように治療のガイドとならない点も問題である。そこで、一過性AKIないし遷延性AKIという考え方がより有用ではないかと考える。
 AKIの重症度ではなく時間の概念が重要であると最初に示したのはCocaらの研究である。彼らは術後のクレアチニン上昇が遷延すると予後が悪いことを報告した。また、我々は32,000のICU入室患者を対象とした8年間の観察研究で、AKIが遷延すると予後が悪化することを見出した。本誌に掲載されたPerinelらの研究は遷延性AKIを3日間のうちに腎機能が回復しない状態と定義したとき、62%が遷延性AKIの定義に合致し、一過性AKI患者に比べて重症で院内死亡率が高い傾向にある事を示した。これからの臨床研究では遷延性AKIをエンドポイントに含めるべきである。
遷延性AKIに対するアプローチ(文献より引用)
◎ 私見
 DAMAGE(Table 1)という遷延性AKIに対するアプローチが興味深かった。何かを知る(勉強する)こと、それを咀嚼して臨床に応用することはできても、それを系統的に伝えること(示すこと)は難しいことが多い。こういうふうな提示の仕方ができる人になりたいものである。

0 件のコメント:

コメントを投稿