2016年7月5日火曜日

ハロペリドール無効のせん妄にデクスメデトミジンは有効

Dexmedetomidine for the Treatment of Hyperactive Delirium Refractory to Haloperidol in Nonintubated ICU Patients: A Nonrandomized Controlled Trial.
Carrasco G, Baeza N, Cabré L, Portillo E, Gimeno G, Manzanedo D, Calizaya M.
Crit Care Med. 2016 Jul;44(7):1295-306. PMID: 26925523


✔ 背景
 せん妄はICU合併症として頻度が高い。国際的なガイドラインではハロペリドールがせん妄に対して推奨されているが、ハロペリドールが禁忌の症例や高用量でも無効な場合にどのような選択肢があるのかは示されていない。そこで、活発型のせん妄を呈する非挿管患者に対してデクスメデトミジンを用いることの有用性について検討した。
✔ 方法
 非無作為化比較対照試験。Medical-Surgical ICUに入室した連続する活発型せん妄患者を対象とした。全症例はまずハロペリドールをRASS 0~-2になるか一日の最大投与量に達するまで投与した。次いで、ハロペリドールが有用であった群を対照とし、無効であった群にデクスメデトミジン(DEX)を投与した。

・ハロペリドール投与法
 初期鎮静:2.5~5㎎を10~30分おきに投与。1日の最大量は30㎎に設定した
 維持鎮静:ハロペリドールが有効であった場合、0.5~1㎎/hrで持続投与した
・DEX投与方法
 ハロペリドールによる初期鎮静無効例に対して上記のハロペリドール維持鎮静に加えてDEXを0.2µg/kg/hrで持続投与した(ボーラスはしない)。さらにRASS 0を達成するために0.7µg/kg/hrまで増量した。ハロペリドールは漸減した。


✔ 結果
 132例が対象となった。46例(34.8%)はハロペリドールが無効であり、残りの86例(65.2%)は有効であった。DEXを投与すると、大部分の患者に対して安全で良好な鎮静レベルを達成できた(92.7%)。ハロペリドールは過鎮静(11.6%)やQT延長(2.0%)の原因となった。DEXはハロペリドールより高コスト(17倍)であるが、ICU在室日数を減らすため、最終的には4370ドルの経費節減となった。
✔ 結論
 DEXはハロペリドールが無効である非挿管患者の活発型せん妄に対し、安全かつ有効であり、コストも安い。

◎ 私見
 ハロペリドールが有効であった群と無効であった群で比較しているという点に注意が必要だが、それを差し引いてもDEXは良さそうである。それにしてもハロペリドール有効群の1日投与量の平均が40㎎近い。5㎎のアンプルを1日8本使う計算である。日本でもこのような使い方をしている施設ってあるのだろうか?(当施設はこの量の半分以下しか使われていない)

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