2016年7月2日土曜日

ICUにおける身体診察②

Bedside Diagnosis in the Intensive Care Unit. Is Looking Overlooked?
Metkus TS, Kim BS.
Ann Am Thorac Soc. 2015 Oct;12(10):1447-50. PMID: 26389653

✔ 身体診察の実状
 エビデンスの欠けた状況では、施設が違えば身体診察に関する態度も変わってくるだろう。また、体位変換、不安定性、ドレッシング、点滴ライン、チューブ、モニタコード、騒音などの身体診察を難しくする要素がICUには存在する。
 ICUにおける身体診察は系統的なアプローチがよいと思われるが、その実際についてはほとんどデータがない。ある調査では、研修医や医学生、看護師は患者診察を行うが、指導医は時々診察するか全くしないという状況であった。
 あるICUではすべての患者に対して医師、看護師、学生からなるチームが回診時に診察を行っていた。一方で他のICUでは研修医が回診前に予診を行い回診時に報告するも、上級医はその所見を確認していなかった。
 電子カルテに記載された診察所見が記述者自身が確認した所見のみで構成されることはほとんどないということも考えなくてはならない。2006年の調査では、25%の記述はコピーペーストされたものであった。最近のものはもっと悪くなっており、4分の3の医師が作成した記述のなかに20%以上のコピーペーストが認められている。
 医師は回診前、回診後、回診中に診察するか、もしくは全くしない。新しい重症患者が入室するとチームはそちらにかかりきりになり、ほかの患者の診察は後回しになる。感染予防のために隔離処置されていたり、検査中ないし手技中の場合も同様である。実際、ある調査では医師は通常の患者の73%を診察するが(これも低い数字ではあるが)、隔離中では35%に減少することが示されている。ICUにおける標準的ない身体診察というものは存在しないし、どれが有用かもわかっておらず、診察チームに誰が含まれるべきかもわかっていないのである。

✔ 我々の方法
 系統的な身体診察はそれなりに価値があると考えている。ベッドサイドでの評価には身体診察だけでなく、カテーテルや医療機器、術創部、モニタの数字、呼吸器の波形モニタなどの評価も含まれ、家族の様子なども評価対象となる。
 評価はチェックリストを用いて行う。多職種チームで診察をすることで教育や学習効果も期待できる。診断は、それ単独では誤診につながるといわれる画像や血行動態モニタを適切に参照して行う。このようなアプローチには時間がかかるが、家族はICUでのケアに満足する。ベッドサイドでの”手当て”はハイテク機器や高度な治療のために非人間化されがちなICUにおいて、人間らしさをもたらす。
系統的診察(文献より引用)
◎ 私見
 以下、超音波検査を組み込むこと、系統的身体診察の有用性を検討するためのRCTが望まれることが述べられている。
 「ICU患者の評価」をどのように行うのが良いのか、ここのところずっと気になっている。他の施設の他の先生方はどうしているのだろう? 何から始めて、どれくらい時間をかけて、カルテにどのように記載するのか。JSEPTICのアンケートでやらないかな・・・

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