2020年1月18日土曜日

P/Fに影響する因子

Benefits and risks of the P/F approach.
Gattinoni L, Vassalli F, Romitti F.
Intensive Care Med. 2018 Dec;44(12):2245-2247. PMID:30353385

P/Fは様々な要因によって影響を受けてしまうため、その解釈には注意を要する。P/Fが同じ値であっても、全く別の臨床状況を意味することがある。

1)肺胞酸素分圧の影響
本来PaO2/PAO2で考えるべきなのに、P/FにおいてはFIO2でPAO2を代用している点に注意が必要。肺胞換気式 PAO2 = FIO2 × (Pb―47)― (PaCO2 ÷ R)を考えると、大気圧すなわち高度が高くなるとPAO2 が小さくなり、PaO2/PAO2が大きくなる可能性がある。ECCO2Rを行っていると呼吸商 Rが小さくなるためPAO2が小さくなり、PaO2/PAO2は大きくなる。

2)シャント率や酸素需給バランスの影響
Rileyモデルによると、Venous admixture(シャント率)=(CcO2-CaO2)/(CcO2-CvO2)である。ここで、CcO2は肺胞気によって酸素化された血液の酸素含量、CaO2・CvO2は動脈・静脈血酸素含量である。P/FはCcO2-CaO2ないしCaO2/CcO2と同じ意味を持つ。P/FすなわちCcO2-CaO2=Venous admixture × (CcO2-CvO2)なので、P/Fはシャント率や混合静脈血酸素飽和度の影響を受けることになる。また、CvO2=CaO2-酸素消費量VO2/心拍出量Qtなので、酸素消費量や心拍出量の影響もうけることになる。

文献より引用
・Qva/Q:シャント率、幅は心拍出量による影響を示している、酸素消費量は一定としてある
・シャント率が高くなるとP/Fが低くなる
・心拍出量が大きくなると混合静脈血酸素飽和度が低下するためPaO2が上昇する(P/Fが上昇する)
・例えばシャント率20%で心拍出量6L/minのとき、FIO2 0.3~0.7ではmild ARDSと診断されても0.7~1.0ではARDSではないと診断されてしまうことになる

3)臨床応用
重症度を評価する際にはFIO2を一定に保って比較する方が良いかもしれない。PEEPはシャント率を低下させるが心拍出量を減少させる可能性もある。つまり、P/Fを上昇させることもあれば低下させることもあることに注意する。リクルートメントを行うときには注意。

◎私見
P/Fも単純なようでいて奥が深い。シャントが多くなるとP/Fは低くなる(酸素投与に全く反応しなくなる)こと、心拍出量の影響を受けること、FIO2が高い時はP/Fを過小評価する可能性があることあたりをおさえておけばよいか。

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