2015年8月10日月曜日

肺エコーと酸素飽和度によるARDSの診断

Pulmonary ultrasound and pulse oximetry versus chest radiography and arterial blood gas analysis for the diagnosis of acute respiratory distress syndrome: a pilot study.
Cameron M. Bass, et al.
Crit Care 2015;19:282

✔ 背景
医療資源が限られている状況ではARDS診断のための情報を常に集められるとは限らない。超音波とパルスオキシメータはこのような状況でも手に入る。このふたつのモニタを用いたARDSの診断精度について調査した。
✔ 方法
前向き単施設研究。医師は4時間の肺エコーのハンズオンセミナを受講した。約2カ月の間にICUに入室した人工呼吸管理患者を対象として検討した。胸部熱傷、フレイルチェスト、循環不安定、担当看護師の拒否、姑息的治療、18歳未満、腹臥位、研究日に抜管が計画されている場合などは除外した。
研究に組み入れられた場合、担当医はまず患者情報や画像所見をみないで超音波検査を行った。片側3カ所、合計6カ所をスキャンし、Bラインの有無で6段階に評価した。超音波検査は5分以内にとどめた。FiO2とSpO2は超音波記録中の値を採用した。検査は午前6時30分に行い、その後の血液ガス検査と胸部X線写真検査との時間差を無くすように努力した。
ARDSはベルリン定義に則り胸部X線写真と酸素化で診断した。CTは使用しなかった。超音波法では、両側のUIS(Ultrasound interstitial syndrome)=3本以上のBラインの存在に加えて、SpO2/FiO2定価で診断した。
✔ 結果
77人の患者に対して123回の超音波による診断が試みられた。ベルリン定義に基づくARDSは35回の評価において認められた。
SpO2/FiO2はSpO2≦97のときP/F比と有意な相関(r=0.48)を認めた。P/F≦300を診断するためのSpO2/FiO2≦315所見の感度は83%、特異度は50%であった。P/F≦200を診断するためのSpO2/FiO2≦235所見の感度は70%、特異度は90%であった。両側に合計3領域以上のUISが認められた場合の胸部X線写真上の両側浸潤影を診断する感度は80%、特異度は62%であった。両者を組み合わせた場合(SpO2/FiO2と超音波)のARDS診断感度は64%%で特異度は86%であった。
✔ 結論
超音波とSpO2/FiO2はARDS診断において使用可能である。
肺エコー所見(文献より引用)
◎ 私見
超音波と酸素飽和度のみでもARDSを診断できるかもしれないという論文。なんでも超音波な時代になってきた。繰り返し検査できる利点を患者さんに還元できるような戦略を考えるべきなのでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿