Gattinoni L, Marini JJ.
Intensive Care Med. 2015 Dec;41(12):2201-3. PMID: 26399892
✔ 過去にARDSの予後を改善することが証明された研究は低一回換気量、腹臥位、筋弛緩薬の三つだけである。機序は若干異なるが最終的には人工呼吸管理に伴う有害事象を減らすことで予後を改善することが共通している。
✔ 腹臥位
腹臥位の有益性は酸素化の改善である。腹臥位にすることで背側肺が大きくリクルートされ、腹側肺の容量減少を凌駕する。もし換気も改善するのなら予後はもっと良くなるだろう。腹臥位の最も重要な点は解剖学的な観点から、肺全体が均等に換気されるようになり、物理的なストレスが減少するという点である。
初期の無作為化試験は重症度に関わらずARDSを対象とし、1日6時間の腹臥位としたためか有効な結果では無かった。Guerinらはより重症のARDSのみを対象としてより良い結果を報告した。
腹臥位の利益をうけるためにはリクルート可能な肺組織が存在し、換気不均等が生じていることが必須である。この点は重症ARDSの特徴でもある。よって長時間の腹臥位換気はP/F<150で考慮ないし試験的に適用してP/F<100では積極的に行うことになるが、腹臥位が有用なARDSの条件となると未だはっきりしていない。
✔ 筋弛緩薬
筋弛緩薬は酸素化を改善し、酸素消費量を減らすことで換気必要量を減らし、混合静脈血酸素量を増やし、PEEPに対するリクルートメント効果を増強することができる。ARDSで吸気努力が強いときは非同調を減らして機械的合併症を減らす事ができる。過去25年間は筋障害や気道分泌物クリアランスの低下の悪影響が懸念されているうえに自発呼吸をのこす事の有益性が報告されて、筋弛緩薬は使われなくなった。それゆえPapazianらの報告(ACURASYS)は驚きを持って迎えられた。
いくつかの点が議論になっている。まず、酸素化が極めて悪い群にのみ予後改善効果が認められている。また、高PEEPが有用と考えられる重症ARDSを対象としているにもかかわらず低めのPEEPが使用されている。シスアトラクリウムを投与するのは最初の48時間だけであるにもかかわらず死亡率に差が生じるのはかなり後になってからである。また、予後について確定的なことを言うにはアンダーパワーである、といった点である。興味深いことに、両群間の分時換気量には有意差が無く、呼吸努力を減らす事が予後改善の要因ではないようである。シスアトラクリウムは他の筋弛緩薬(ステロイド骨格を持つ)に比べて安全である、という点も重要である。
我々は筋弛緩薬を標準的治療とはみなしていない。しかし、重症で呼吸器との非同調が著しく低酸素が継続しているような症例では使用できるかもしれない。
✔ 結論
腹臥位と筋弛緩薬は重症ARDS患者の一部で適応となりえる。ただし、腹臥位は実験的にも臨床的にも標準的治療に加えることに異論はないが、筋弛緩薬はそこまでではない。腹臥位は長時間の適用が望ましい。筋弛緩薬は鎮静を強めても過剰な吸気努力が生じている(食道内圧計等で評価)で使用を考慮する。
◎ 私見
Gattinoni先生の中立意見。というか、腹臥位はいいけど筋弛緩薬はそれほどでもという感じ。自分の意見はこの意見に近い。腹臥位が有用な条件…。CTは難しいから肺エコーで評価できるといいのかなあ。
✔ 腹臥位
腹臥位の有益性は酸素化の改善である。腹臥位にすることで背側肺が大きくリクルートされ、腹側肺の容量減少を凌駕する。もし換気も改善するのなら予後はもっと良くなるだろう。腹臥位の最も重要な点は解剖学的な観点から、肺全体が均等に換気されるようになり、物理的なストレスが減少するという点である。
初期の無作為化試験は重症度に関わらずARDSを対象とし、1日6時間の腹臥位としたためか有効な結果では無かった。Guerinらはより重症のARDSのみを対象としてより良い結果を報告した。
腹臥位の利益をうけるためにはリクルート可能な肺組織が存在し、換気不均等が生じていることが必須である。この点は重症ARDSの特徴でもある。よって長時間の腹臥位換気はP/F<150で考慮ないし試験的に適用してP/F<100では積極的に行うことになるが、腹臥位が有用なARDSの条件となると未だはっきりしていない。
✔ 筋弛緩薬
筋弛緩薬は酸素化を改善し、酸素消費量を減らすことで換気必要量を減らし、混合静脈血酸素量を増やし、PEEPに対するリクルートメント効果を増強することができる。ARDSで吸気努力が強いときは非同調を減らして機械的合併症を減らす事ができる。過去25年間は筋障害や気道分泌物クリアランスの低下の悪影響が懸念されているうえに自発呼吸をのこす事の有益性が報告されて、筋弛緩薬は使われなくなった。それゆえPapazianらの報告(ACURASYS)は驚きを持って迎えられた。
いくつかの点が議論になっている。まず、酸素化が極めて悪い群にのみ予後改善効果が認められている。また、高PEEPが有用と考えられる重症ARDSを対象としているにもかかわらず低めのPEEPが使用されている。シスアトラクリウムを投与するのは最初の48時間だけであるにもかかわらず死亡率に差が生じるのはかなり後になってからである。また、予後について確定的なことを言うにはアンダーパワーである、といった点である。興味深いことに、両群間の分時換気量には有意差が無く、呼吸努力を減らす事が予後改善の要因ではないようである。シスアトラクリウムは他の筋弛緩薬(ステロイド骨格を持つ)に比べて安全である、という点も重要である。
我々は筋弛緩薬を標準的治療とはみなしていない。しかし、重症で呼吸器との非同調が著しく低酸素が継続しているような症例では使用できるかもしれない。
✔ 結論
腹臥位と筋弛緩薬は重症ARDS患者の一部で適応となりえる。ただし、腹臥位は実験的にも臨床的にも標準的治療に加えることに異論はないが、筋弛緩薬はそこまでではない。腹臥位は長時間の適用が望ましい。筋弛緩薬は鎮静を強めても過剰な吸気努力が生じている(食道内圧計等で評価)で使用を考慮する。
◎ 私見
Gattinoni先生の中立意見。というか、腹臥位はいいけど筋弛緩薬はそれほどでもという感じ。自分の意見はこの意見に近い。腹臥位が有用な条件…。CTは難しいから肺エコーで評価できるといいのかなあ。